試聴1 試聴2 CDはこちら【プレス・リリース】エムのタイ音楽再始動!!今回よりParadise Bangkok/Soi 48/EMの合同チームで、タイのレジェンド達の名演をお送りするシリーズが始動します。第一弾はモーラム(注1)とルークトゥン(注2)を初めて融合させたタイ音楽史に残る名盤、アンカナーン・クンチャイの『イサーン・ラム・プルーン』(1975年)です!!
イサーン(タイ東北部)のウボンラーチャタニー県に生まれたアンカナーン・クンチャイは、モーラム界に現れた天才少女で、“歌える”モーラム歌手(注3)の第一世代にあたる。国を代表するモーラム歌手、チャウィーワン・ダムヌーンに幼少から弟子入りし、10代半ばで名門楽団、ウボン・パタナー・バンドの主役歌手になった。
本アルバムのタイトル曲である「イサーン・ラム・プルーン」(1972年)は彼女が16歳で吹き込んだもので、現在人気絶頂のターイオラタイにまで歌い継がれる不朽の名作である。同曲はウボンの名プロデューサー、スリン・パクシリを代表する仕事でもあるのだが、理由はこの曲がモーラムをはじめとするイサーンの音楽と、バンコク主導のルークトゥンを融合させた新音楽“ルークトゥン・イサーン”(注4)の幕を開けた曲だからだ。天才的なレコード・マン、パクシリが“発明”したルークトゥン・イサーンは、モーラム楽団がロックバンド化し、ルークトゥンのノリで演奏し生まれたもので、モーラムの伝統のタブーも破ってしまった実は相当に奇抜な音楽。しかし「イサーン~」が映画『ブアランプー』の主題歌として大ヒットし、この禁断のカッコ良さに皆が感化され、次々とルークトゥン・イサーンが演奏されていくことに。後にこれが伏線となってイサーン音楽が全国を浸食、90年代にはタイでモーラム・ブームが起こり、ルークトゥン歌手もモーラムを歌わないと興行出来ない状態になった歴史的背景もある。
パクシリ制作の本作は、アルバムといえばシングル曲の寄せ集めというタイで、コンセプチュアルな統一感をもっている点が極めて重要。ウボン・パタナー・バンドの過激なまでにジャンル越境した演奏に、少女の可憐な声が乗る不思議な世界……その後登場するルークトゥン・イサーン諸作と隔絶した存在感をもつ問答無用の名盤だ。ボーナスとして数多ある「イサーン~」のカバーから、コンペッチ・ケーナコーンによるヴァージョンを収録。英語・日本語解説&歌詞説明付き(必読!)。
注1)モーラム:モーは達人、ラムは声調に抑揚をつけながら語る芸能。つまり“語りの達人”で、その歌手とジャンル両方をさす名称。
注2)ルークトゥン:タイの地方の音楽とロック、ラテン、インド、中国、日本、ハワイ等々の音楽を吸収して形成されたタイ独自の歌謡ジャンルかつメインストリーム。通称「田舎者の歌」。60年代前半にその名ができた。
注3)モーラムは“歌”ではないのでこの区別は重要。当時モーラム歌手がポップスを“歌う”ことはある意味で禁断だった。
注4)ルークトゥン・イサーンの3大クラシックは、アンカナーンの「イサーン・ラム・プルーン」、ホントーン・ダーオウドンの「ホントーン・カノン・ラム」(エムのトンファド・ファイテッドCDに収録)、オヌマ・シンシリーの「サオ・イサーン・ロー・ラック」といわれる。